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ゲームとかの話

ゲームを中心としたヨタ話

転売屋はなぜ嫌われるのか 【2016/8/24 推敲しました】

転売問題について考える

ふと、ネットをぶらついていたら「チケット転売肯定論」なるテキストを発見したので。

※チケット転売肯定論
http://www.livehis.com/note/note_tenbai.html

詳細はリンク先をご参照いただくとして、論旨としてはまぁ↓のような感じでしょうか。
・当日都合が悪くなって行けなくなった人の救済措置が欲しい
・運に依存するやり方は不公平であり、
「金で解決できる枠組み」の方がよほど公平である
・転売を抑止したいのであれば主催者が自らオークションすればいいじゅん
(その他対案が幾つかあり)


で、本論はいくつかの視点に欠けているように思えましたので、反論を試みてみたいと思います。

ちなみに、この文章を書いている人は単なるゲーム好きのオッサンであり、音楽ライブなど、音ゲーライブに行ったことがあるくらいの人ですので、音楽クラスタの人たちの心情への斟酌などで、事実を誤認している可能性があります(ご指摘いただければこれ幸い)。


■ 「主催者オークション」などと言うおいしすぎるアイディアを、当の主催者が思いついていないハズがない

これだけヤフオクが一般化し、お金儲けをしたい人たちにあふれている日本社会で、イベントの主催者サイドが、自社の商品を流通をコントロール下に置くことができ、高価格でホイホイ売れるのが確定している「主催者オークション」という枠組みを思いつかないワケがないでしょう。

そこを敢えてやっていないワケです。何か理由があると考えるのが妥当でしょう。


■ 利益追求のための価格つり上げとはなじまない業態である

ここでまず考える必要があるのは、音楽ライブに限らず、コンテンツ産業と言うのは「人気商売」である、ということです。

コンテンツの価値というものは、かなりの比重で「たくさんの人に好きになってもらう(好きでいてもらう)こと」によって決まってきます。

多くの人はお金持ちではありません。
しかし、アーティストはお金持ちだけをターゲットにしていては食べていくことができません。

お金持ちではない多くの人に好きになってもらわなければ、お金持ちにも好きになってもらえないのです。

そこには当然「みんな知っている」「話題になっている」という要素が絡んできます。

とあるコンテンツに入れ込むということを考えるときに、この種の話題性は重要です。
コンテンツの良し悪しを区別する審美眼を持つ少数の人(それもお金持ちかどうかも分からない)だけを相手にしていては、アーティスト・クリエイターたちは食べていくことができません。

いわゆる「人気商売」と言うものは、「話題になっているのだから良いものに違いない」と思って好きになる大多数の人たちによって支えられているのです。


つまり、平均的な所得の人が週末の余暇に費やすことのできる一般的な予算を逸脱するような価格設定を行なっては、この多くの人たちの「好き(かも)」という気持ちに水を差してしまいかねないのです。
従って、各種の「中抜き」が乗っているとしても、「適正な経費・適正な利益でみんなに楽しんでもらう」という建前を崩す訳にはいかないのです。

ディズニーランドがその単価を維持するために、どれだけの努力をしていることか。

※ また後述しますが、これらの「中抜き」も、イベントを成立させるにあたって陰に陽に一定の役割を果たしているからこそ「抜かれる」のです。転売差額とは本質的に別物である、という認識は持っておく必要があるでしょう。

コンテンツというものは、単価を無制限に上げられる性質の商品ではないのです。

■ コンテンツと「オークション」の相性の悪さ

また、オークションという販売形式も、人気商売との相性が悪うございます。
そもそもオークションという販売形式自体が、コンテンツ性を多分に含んでいるため、相性が良すぎるのがまずい、とでも言いましょうか。


オークションによる価格決定のメカニズムには、物質的・本質的な価値に対して、感情的・個人的価値が大きく作用するという性質が内包されています。

対して、コンテンツ商売というのは、ほとんどダイレクトに、感情的・個人的価値を売り物にしているわけです。

したがって、コンテンツ関連商材をオークションにかける、ということは、「金持ちの個人的な趣向によって、販売者に不当な大金がもたらされる」というネガティブなイメージが付きまといます。

一般向けオークションの多くが「チャリティー」の皮をかぶっているのもこのためです。

強欲な金持ちが金に飽かして欲しいものを独占する、というイメージの悪さもあります。

この種のネガティブイメージは人間の嫉妬心であるとか僻みという負の感情の産物で、多くの場合、非生産的な不毛な議論になりがちですが、ことコンテンツビジネスの世界はその「イメージ」を売り物にしていますので、無視できるものではないのです。



■ 公演回数を増やすことのリスク

(ある程度)薄利が宿命づけられているとはいえ、多売するわけにもいかないのが、箱モノ系イベントの宿命です。
箱のキャパに制限があるから当然ですね。

公演回数の追加にも注意が必要です。公演数の増加はそれだけコストがかかりますから。

主催者も慈善事業でやっているわけではありませんので、赤字を出すリスクはなるべく抑える必要があります。

何より、無制限に公演回数を増やしてしまっては、アーティストたちが持ちません。
死んじゃう死んじゃう。


箱モノイベントと言うものは必然的に、
需要>>供給
という関係が運命づけられている事業なのです。


他にも、供給の「枯渇感」の演出によって盛り上がり感をつくる、など商売としての戦略もあります。


■ 転売(屋)はなぜ嫌われるか

さて、「転売チケットをヤフオクで売る」という行為がなぜ嫌われるのでしょうか。


オークションの話で触れたとおり、オークションによる価格決定のメカニズムは、物質的・本質的な価値に感情的・個人的価値が上乗せされるという性質を持っています。
これがいけません。

アーティストの熱狂的なファンであればあるほど、自分のアーティストへの愛の深さゆえに、「足元を見られた」「ボったくられた」「ボったくっている」と映るのです。



また、その差額の「本質的な価値」も、「チケット発売の瞬間にネットでF5連打」だったりするわけです。

5%程度の差額であれば文句はないかもしれません。
しかし、数倍、時に数十倍の価格にまで吊り上った、その差額が転売屋の懐に転がり込むのです。
ともすれば、チケットが欲しいその人は、その瞬間、働いていたのかもしれません。

この、「多額の不労所得」への反感は、オークションに限った話でもありませんね。

これに好感情を抱けと言うのは、多くの人にとって大変難しい話ではないでしょうか。



■ 転売屋・転売行為が嫌われる限り、転売対策は続く


株式や先物取引での利益にも同種の事象が存在しますが、ここでは「イメージ」はあまり重要ではありません。

しかし、コンテンツを売り物にする以上、「イメージ」の良し悪しは、切って切り離せるものではないのです。


主催者は「ファンたち」に転売行為が嫌われるからこそ、「溜飲が下がる」と言う形の転売対策を行なうのです。

転売屋たちへの怒りが、懲罰的な裁定を喝采する土壌を産みます。

すなわち、「転売が確認された席を封鎖する」という対策は、ファンたちにとって、最も「気持ちの良い」裁定なのです。
もう、ある種のファンサービスになっていると言っても良いのではないでしょうか。



そもそも主催者にとって、転売屋に配慮する動機はありません。
むしろ滅びれて欲しいと思っているのではないでしょうか。

「ネットゲームにおけるRMT」の問題に通じるものがあると思われます。

※参考
http://www.4gamer.net/specials/060426_rmt/060426_rmt_001.shtml

一言で言えば、
「人様ん家の庭で、勝手に商売してんじゃねえ」
です。


≪まとめ≫

転売行為は、多くの人の感情を逆なでする行為である。
単なる感情論にすぎないが、「人気商売」ではその感情こそが売り物。
なので、感情論で許容しがたい行為を容認するわけにはいかない(下手すりゃコンテンツが死ぬ)

……とはいえ、主催者オークション自体、誰かが試したわけではありませんので、
どこかのアーティストが実験的にやってみるのも良いかもしれませんね
(危ない橋過ぎて誰も渡る気になれないでしょうが)。

2016/8/24 追記

またぞろ転売関連の話が話題になってきました。
この記事のあと、下記記事において、ゲーム業界・ゲーマーの視点で転売問題を眺めてみた、といった風情で補足も記していますので、ご興味の向きは併せてご参照いただければ、と。

genzui.hatenadiary.jp